Fantasy_since_1959 WebSpace

私のメールマガジンをご披露します。  

私のメールマガジンは2004年4月より、メルマガスタンド「まぐまぐ!」から月刊で発行しています。

メールマガジン名は 『Fantasy_since_1959 WebSpace』。

伝説のサーフィン・ロード・ムービー「エンドレス・サマー」をモチーフに、「終わりなき夏」を題材にした短編集です。

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Fantasy_since_1959 WebSpace  2006年2月20日号

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こんにちは☆Fantasyです。

今回のFantasy_since_1959 WebSpace は、「黄昏で見えない 2 後編」をお届 けします。

リストラされ、妻子に見捨てられハワイはコナにて画家を目指す 鈴木明 の 親友、北村信義 を主人公とした「黄昏で見えない」のバージョン違いを描く ことをコンセプトとし、鈴木 と同じ歳ではあるが、一足先にコナに定住し、 サーフボードをオーダーメイドで制作販売するビジネスを立ち上げた彼のラ イフスタイル。鈴木 の受難を目の当たりにした親友であり元同僚の 北村 の 心情を書きたいと考えました。

日々生活の改善の必要性を感じ、仕方なく会社勤めをしていて、雇われる生 活を余儀なくされている人に読んでもらい、人生の可能性は自分のやる気ひ とつで切り拓いていけるものであることを再認識していただけたら幸甚です。

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黄昏で見えない 2 後編

[ 前編のあらすじ ]

一足先にコナに定住し、サーフボードをオーダーメイドで制作販売するビジネ スを立ち上げた 北村信義 は、同じ歳のかつての職場の同僚であり親友の 鈴木明 から会社をリストラされ、妻子が家を出た、との国際電話を受ける。 彼は鈴木宛の手紙で新しい生活の基盤をコナで立てるように勧めるが・・・。

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手紙を読み終えると、彼はカイルア・ビュー・エステート内の敷地に出た。 快晴の空の下、太陽は大きく西に傾き、高台にある敷地には夕陽が燦々と降り 注いでいた。

鈴木や自分がこれから何処に行こうとしているのか彼は考えていた。 ハングライダーに興じている人が海の遥か上空に見え隠れしていたが、黄昏で 見えなくなった。

日本の連休明けの5月某日、彼は昼前に自宅を出て、鈴木と待ち合わせをしてい るワイコロアのホテルにピックアップトラックで向かった。

5月にしては快晴の暑い日で、彼はトラックのエアコンを入れた。

ビーチ沿いの道路を法定速度でゆっくり走っていると、クライアントのロコサ ーファーたち数人が手を振っているのが見えた。 彼は満面の笑みで短くホーンを鳴らして応えた。

交差点の赤信号で一時停止をして、ビーチを見ると手頃な波が立っていた。 彼はトラックのラジオのスイッチを入れ、お気に入りの波情報に周波数を合わ せた。

ランチタイムで人も疎らな交差点の横断歩道をタンクトップとショートパンツ 姿の背の高い若い女性が歩いてくるのが見えた。 地元で知り合いのフランス人の父と中国人の母を持つジョディだった。手には オリンピアの缶ビールを持っていた。

彼はトラックのサイドウィンドウを下げ、「アロハ!ジョディ」と叫んだ。 彼女は彼に気付くと、ぱっと美しい笑顔になり「ハーイ!」と応え、近寄って きた。

「オリンピアはランチかい?それともデザートかい?」 彼は流暢な英語でジョークを飛ばした。

「暑くて喉が渇いているから飲んでるだけ〜」 彼女は甘えん坊な口調で笑いながら言った。小麦色に焼けたスレンダーな四肢 と端整な顔立ちが眩しい。

信号が青になったので、彼は「今度またガーデン・パーティーにおいで!」と 彼女に言いトラックを発車させた。 彼女は「ありがとう、楽園の良い一日を!」と言い、手を振った。

ホテルに着くと彼はフロントから鈴木の部屋に電話をした。 バーで待っていると、彼はすぐに現れた。10年ぶりに再会した鈴木は顔色が悪く、 憔悴し切っているように見えた。 一見してとても自分と同じ50歳には見えなかった。

「ハワイにようこそ!」 北村は相好を崩しながら大声で言った。

ビールを飲みながら鈴木の今までの経緯をひとしきり聞き入っていた北村は 「ゆくゆくはここに家を買うとしても、長いホテル暮らしは金がかかるだろう。 とりあえず、俺のうちに来ないか?」と言った。

「うちは娘がアメリカへ嫁に行ったし、女房も年の半分は娘のところだ。やも め暮らしの男同士で気ままにやろうや」

「それはありがたい」

「しかし、絵を描いて売ると言ったって簡単にはいかないだろう。どうだ、 俺の工場で働かないか?」

「工場?」

「ああ、詳しく話していなかったと思うが、サーフボードを作っているんだ。 これが結構いい金になる。欧米の金持ちから特注品のオーダーが入るんだ」

「そう言えば、お前、日本にいた頃、週末になるとよくサーフィンに行くと言 っていたな」

「日本にいた頃か、懐かしいな。今から思うと、どぶくさい海で我慢していた 頃だ」北村は苦笑した。 「1月頃、オアフの北海岸に行ってみろ。凄い波が立つ。大波の“ジョーズ” と呼ばれているんだ。腰を抜かしてしまうぞ。俺たち年寄りはコナ・コースト で釣でもやるのが一番さ。ここの魚は何でも旨い」

「しかし、サーフボードを作って売る商売と一口で言ってもたいへんだろう? よくそんな伝手があったな」

「もう始めて7〜8年になる。趣味でサーフィンをやっているうちに、自分でボ ードを削るようになったんだ。それを地元のサーファーが買い出して、そのひ とりがインターネットのウェブサイトで紹介してくれたのさ。それから、自分 でウェブサイトを立ち上げて販路を拡大したわけさ。インターネットはいい商 売道具だよ」

翌日、北村はコナの中心地から2キロほど山側へ寄ったカイルア・ビュー・エス テート内の自宅に鈴木を案内した。静かな住宅地の中で、日当たりのよい400坪 近い敷地にスリーベッドルームのフレンチスタイルにプールが付いた小さな白 い平屋の家があった。

家は、隅々まで手入れが行き届いていていた。キッチンの設備も全自動食器洗 機からディスポーサーまで最新式で、ラナイには小さなプールがあり、芝生は 美しく刈り込まれていた。ファーニッシュトの家具はすべてが白い色で統一さ れた、建坪が75坪ほどの窓の多い明るい家だった。

「驚いたなぁ・・・」 鈴木は正直な感想を口にした。 「豪邸だ。これでいくらだ?」

「いくらだと思う?」 北村は悪戯っぽく聞いた。

「東京なら億はする」

「俺が10年前に買ったときに40万ドルだ」

「当時のレートで130円として、5,200万円か・・・」

「俺はここに住んでつくづくわかったんだが、東京の物価は異常だ。コナでは 贅沢をしなければ、1ヶ月10万もあれば余裕で暮らせる」 北村は話しながら鈴木を母屋に隣接するガレージへ案内した。 「ここでサーフボードを作っている」

その日から鈴木との共同生活が始まった。

北村はオーダーが入ったときだけ、サーフボードを制作した。鈴木はデッキを サンドペーパーで磨いたり、簡単なペインティングなどをして手伝った。工場 といっても、従業員がいるわけではなかった。材料の仕入れと製品の出荷のと きだけ、外注の業者がやって来た。

週末には、北村の友だちの日系人のホームパーティーに招かれ、庭でバーベキ ューや釣果の刺身を楽しんだ。 鈴木は仕事の合間を見つけては、コナ・コーストに日参してロコの娘たちの絵 を描いた。

1ヶ月が経過した頃、20数枚の油絵が出来上がった。 鈴木は一心不乱に絵を描いていたが、コナの生活を楽しんでいるようには見え なかった。鈴木は口には出さなかったが、絵を描いて生計を立てるという当初 の考えに突き動かされて焦っているようだった。北村は鈴木の作品を披露する 場所を探さねばならないと考えていた。

ある日の夕食の後、北村は居間のテーブルで懸命に何かを書いている鈴木に話 しかけた。 「地元のホテルで催されるフリーマーケットに絵を出してみたらどうだ」

「フリーマーケット?」

「ああ、俺の知り合いにフランス人の画家がいるんだが、彼の娘には先週のホ ームパーティーで会っただろう、ジョディだよ。彼に相談したらフリーマーケ ットに出すのが手っ取り早いと教えてくれたんだ」

「なるほど」

「ただ闇雲に描いていても発表する場所が無ければ売れないだろう?」

「その通りだ。ありがとう、やってみるよ」

鈴木は自信作を選び、展示することにした。 だが、結果は最悪だった。絵は1週間経ってもまったく売れなかった。明らか に失意の底で喘いでいる鈴木を見て、北村はどうすることもできなかった。

そんなある日、一人の女性が北村邸を訪れた。 彼女は流暢な日本語で自己紹介した。

「私はジェニファ・トンプソンと申します。突然で申し訳ありませんが、先日 フリーマーケットで鈴木さんの作品を拝見して、取材させて頂けたらと思い伺 いました。ご協力して頂けます?」

北村は彼女をリビングに招きいれると、名刺を受け取った。名刺にはライター の肩書きがあり、彼女の名前とオフィスの住所が書かれていた。オフィスの住 所はタヒチの有名なホテル内にあった。彼女は白人のアッパーミドル特有の知 的な雰囲気と、きれいなプラチナブロンドの豊かな長い髪をポニーテールにし ていた。身長は北村や鈴木と同じく170センチはあった。年齢は自分たちの娘と たいして変わらない二十代前半ほどと思われた。白いショートパンツからのぞ いた脚は、驚くほど美しかった。

「私は北村です。はじめまして」 北村は彼女と握手した。

「こちらは私の友人の鈴木です」

「はじめまして、鈴木です」 鈴木も彼女と握手した。

「どうぞ、ジェニーと呼んでください」 彼女は言った。 「実は、私はアート関連雑誌の記者をしています。今回は、ニューヨークで行 われるアート・オブ・ザ・ワールド賞に向け、候補者となるべき新人画家の生 活と作品を誌面で紹介したいと思っています」

「アート・オブ・ザ・ワールド賞って、あの画家の登竜門と呼ばれるコンテス ト?」

「そうです」 彼女は頷いた。

「悪い話ではなさそうだな」 北村は鈴木に言った。

「その取材を受けましょう」 鈴木はジェニーに言った。

鈴木はその後1週間にわたる密着取材を受け、約1ヶ月後に催される世界的コ ンテストに向けて1枚の油絵を描いた。北村は鈴木のビッグチャンスに少なから ず驚いた。

ジェニーとの1週間はたいへんに楽しいものだった。彼女がアメリカの大富豪 の娘であること、サーフィンを趣味にしていることも知った。彼女は北村から 特注のサーフボードをプレゼントされ、コナ・コーストでライディングの腕前 を二人に披露した。北村はガーデン・パーティーを開いて自慢の料理をふるま った。三人のエンドレス・サマーは数々の思い出を残した。ジェニーを中心と して、二人の男の青春がよみがえった。

1週間の取材を終え、ジェニーとの別れのときが来た。二人は彼女をコナ空港 まで送った。 別れのとき、ジェニーは二人にとても素敵なキスをしてくれた。

彼女は涙を浮かべながら北村には 「サーフボードをありがとう、大切にします」

鈴木には 「あなたの絵の才能を祝福します、グッドラックを」 と言った。

数ヵ月後、鈴木は描き上げた絵をニューヨークへ送った。残念ながら最優秀賞 を獲ることはできなかったが、佳作として評価され、絵は何百枚と刷られてニ ューヨーク市内のあちらこちらに貼られた。油絵のモデルはジェニーだった。 彼女は美しく微笑んでいた。

タイトルは「黄昏で見えない」だった。

                                  

       

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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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2006年01月01日

今日の一言: 余暇の過ごし方はどう変わるか?