拙作へのご感想のお礼VOL.3

某出版社に拙作の原稿を送ったところ、ご丁寧なご感想を頂きました。 書き手にとって、読んでいただけることが何よりも嬉しかったので、一部をご披露致します。 師走を迎えるお忙しいところ、ご丁寧なご感想を頂き厚くお礼申し上げます。

*作品講評*

□夏の海辺を切り取って、爽やかな風と潮の薫りを漂わせた作品、多彩な人物模様と一途な恋心を浮き上がらせた作品を含めた短編集を拝読した。

淡く切ないラブストーリーを描いた『夏少女』『夏少女2』『脚線美の誘惑』。 父と娘の微妙な関係と心情の機微を捉えた『エトランゼ・エトランゼ2』。 恋人たちの別れをモチーフとした『夏への扉』『静かにきたソリチュード』『脚線美の誘惑2』。 リストラされ、ハワイで絵描きをしながら第二の人生を送ることを願う男に焦点を合わせた『黄昏で見えない』。そして、開放的な空気に溢れた夏という季節の中で、静かな死の気配を漂わせた『DREAMING GIRL』『ガール・イン・ザ・ボックス』『ガール・イン・ザ・ボックス2』。 いずれも、夏の風景を写した一枚の写真のように鮮やかな色彩感覚で描かれた作品であり、7編から12編へとボリュームも増して更に読み応えを感じさせる短編集であった。

□“爽やかな読み味”が本作品集の大きな魅力となっている。夏、海、波乗りというキーワードを散りばめながら、実に軽やかに人物模様を織りなしてゆく。

『夏少女』では、絵梨を想う拓海の純粋な気持ちが夏の夕凪のように描かれ、『DREAMING GIRL』においては、太陽のように眩しく輝く沙希が、水平線に消えるがごとく静かに息を引き取る場面が儚く切なかった。 また、『エトランゼ2』は登場人物の心理の輪郭を浮き彫りとした作品で、娘の成長を断片的にしか見ていない主人公の心の揺らぎを丹念に描いていると言えよう。「ビーチで寛ぐ彼の様子が映し出されたとき、傍らに彩が居た。(中略)ごく普通に。あたかも彼と一緒にいるために何かを決意したような凛とした精悍さすらあった」という最後の一節においては、美しいフィルムを眺める観客の眼差しがあり、ふたりの幸せそうな姿に胸を打たれる父親の様子が具に伝わって印象的だった。

□また、『ガール・イン・ザ・ボックス』『脚線美の誘惑』に関しては、続編が加味されたことでテーマ性が一層明確になっていると思われた。 『脚線美の誘惑2』では、颯爽とカレンを手にした涼を、ルームメイトの恋人に嫉妬する男に変貌させている。波間に輝く男の魅力をコンクリートジャングルの中では退色させたことで存在感が増し、海辺における残像が更にきらめいて効果的であった。 加えて『ガール・イン・ザ・ボックス2』は、愛する人を喪った者の心の空洞が際立つことになった。「私は毎日が幸せです。何故なら此処に居れば、誰にも邪魔されずに安心して由紀と逢うことができるからです」という件は、淡々とした独白の中に「由紀」に注ぐ切愛が滲んでおり、ふたりが生きた証としての小説とともに深い余韻を残していた。

□歌詞の引用に関しては著作権への配慮が欠かせないが、今後は編集者を交えて一作品としての精度を更に高めてゆきたい。瑞々しい雰囲気を醸す青春ストーリーや、死に対して怜悧な眼差しを向けながら最愛の人に想いを寄せ続けるラブストーリーなど、さまざまなシチュエーションにおける出逢いのドラマを映像美も織り交ぜながら描出した短編集であった。本作品集を試金石とするべく世に供し、全国の読者からの反響の声を待ち望みたいところである。

    

2005年11月30日

今日の一言: 余暇の過ごし方はどう変わるか?