"形骸腐臭列島偽婚-不可思議な関係"

この度、「まぐまぐプレミアム」より新作メールマガジンを発行することになりました。

事実上家庭内離婚している両親の「不可思議な関係」を十六歳のヒロイン・亜理紗の視線で描くことをコンセプトにして、社会不安、少子高齢化を背景として、夫婦関係、家族関係が変容していく昨今において、これから人生を歩む若い世代に「一つの生き方」を提案したいと考えております。

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形骸腐臭列島偽婚-不可思議な関係          サンプル版
                       
                            麗澤檸檬         
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 私は山本亜理紗、都心の私立高校に通う十六歳です。
 五年前の夏、母が乳癌の手術入院をしました。私の家は父母と三
歳年下の弟の四人家族です。
 その日は突然やってきました。
 母は美容院を経営していましたので、私は出来る限り店の手伝い
をしました。当時は小学五年生でしたので、たいしたことは出来ま
せんでしたが、お店のお姉さんたちと仲が良かったこともあり、雑
用を手伝ったりするのは大人の仲間入りをするような気分で楽しか
ったのです。
 父はその頃から仕事中心の生活でした。長年勤めた新聞社を退職
して、フリーのジャーナリストとして独立して六年目だったので、
無理もなかったのかもしれませんが、私が記憶している限りでは、
入院している母のお見舞いに来たのは一度も無かったと思います。
 家事は父と私が分担していましたが、父の仕事が忙しくなると、
私がやらなければなりません。弟は幼稚園からサッカーを始め、
小学三年生のその頃は休日もないほど練習していましたので、私が
面倒を見なければなりませんでした。たまの休日に母方の祖父母が
様子を見に来てくれましたが、祖父が病気がちなこともあり、あま
り当てにはなりませんでした。
 私はその頃初めて生理になりました。お腹が痛いと思って気がつ
くと、下着が汚れていました。保健室へ行って少し休みましたが、
先生に事情を話して早退しました。
 母の入院中に、私は時間が許す限り面会に行き、母と話しました。
 「お母さん、具合どう?」
 「大丈夫よ、ありがとう。今日、先生に診ていただいたら術後の
経過は良いそうで、早ければ三週間かからずに退院できるかもしれ
ないそうよ」
 「よかった!」
 「それより、家事や美容院のお手伝いをしてくれているそうね、
ありがとう。勉強は大丈夫なの?」
 「今日は早退しちゃった」
 「何かあったの?」
 「生理になっちゃった」
 「良かったじゃない、おめでとう。退院したら、お赤飯でお祝い
しなくちゃね」
 「お父さんには言わないでね」
 「どうして?」
 「ただ、なんとなく・・・・・・」
 私はその頃から父を敬遠するようになっていました。なんだか父
も私を避けているようにさえ感じました。父がほとんど家にいなか
ったことも原因のひとつだったように思います。
 弟は甘えん坊で寂しがり屋でした。父が不在で二人だけの夜はひ
とりでお風呂に入るのを怖がるので、一緒に入ってあげました。家
のお風呂は比較的広いので、弟がひとりで入ると怖いと言うのは分
かる気がします。小さな温水プールと言っても過言ではない広さで
した。
 「お姉ちゃん、おっぱい大きくなってきたね」
 髪を洗っていると、浴槽に浸かっている彼が言いました。
 「変なこと言うと、一緒に入ってあげないわよ」
 「なぜ女はおっぱいが大きくなって、男は大きくならないんだろ
う?」
 「身体のしくみが違うからよ」
 「お母さん、おっぱい手術しちゃったんでしょ?それって、大丈
夫なの?」
 「そういう病気もあるの。病気だから仕方がないでしょ。でも、
悪いところは取っちゃったから、元気で帰って来るわよ」
 「いつ帰って来るの?」
 「三週間かからずに退院できるかもしれないって言っていたわ」
 「まだ三週間もかかるの?」
 「手術したんだから仕方がないじゃない」
 私は彼と並んで浴槽に入りました。
 「今度の土曜日、試合があるんだけど応援に来てくれる?」
 「何時から?」
 「多分、午後だと思う」
 「私もテニスの練習があるし、お店のお手伝いもしなくちゃなら
ないのよ」
 「お父さんは来てくれないかな?」
 「聞いてみたら?忙しいから無理だと思うけど」
 彼はため息をつきました。
 「仕方がないわね。もし、お父さんが行けなかったら、時間を見
て私が行ってあげる」
 結局父は帰宅せず、連絡も無かったので、弟の試合は私が時間を
やり繰りして応援に行くことになりました。彼はアシスト一、得点
一の大活躍で、観ている私に満面の笑みでガッツポーズをしてみせ
ました。
 それから約二十日後、母の退院が決まり、その週の日曜日に私と
父とで母を病院に迎えに行くことになりました。その日、私は朝か
ら落ち着かず、練習に行く弟の昼食のおにぎりを持たせるのを忘れ
たり、ペットのインコに餌をやるのを忘れたり、ドジばかりしてい
ました。父がセルシオで出る用意をしているときも、リップクリー
ムを塗っては取ってみたり、ミニスカートの丈を気にして何着か着
替えたりして、「早くおいで!」と父が呼ぶのが聞こえました。
 病院に着くと、母は身支度を整えて、きれいにお化粧までして待
っていました。父と母は二言三言交わしただけで、父が退院の手続
きを済ますと荷物を車のトランクに入れて帰途につきました。
 その晩、私は変な夢を見ました。両手両足を縛られて全裸でベッ
ドに寝かされていました。私は縛ってある紐を解こうと、もがくの
ですが、もがけばもがくほど紐はきつく締まっていきます。気がつ
くと、ベッドの下から気味の悪い夥しい数の昆虫が這い上がってき
ます。虫はベッドの上に攀じ登ると、私の身体を舐め始めます。そ
のうちに、その中の一匹が私の胸に噛み付きました。私は声になら
ない叫び声を上げました。
 魘されて目を覚ますと朝でした。寝室の時計は午前六時を回って
いました。汗をぐっしょりかいていて、下着が少し濡れていました。

                            つづく

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形骸腐臭列島偽婚-不可思議な関係          サンプル版
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発行元:儲かる稲妻ライティング塾 http://www.writingkouza.com/
著者:麗澤檸檬 info@writingkouza.com
発行周期:月刊毎月20日
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2008年09月20日

今日の一言: 昔の夢はいい夢だ。叶わなくても良き思い出になる。